小樽市の立地適正化計画について ~進むコンパクトシティ構想~

備忘録

立地適正化計画とは

先日(2025/02/07)、小樽市の立地適正化計画策定委員会の最終会議が行われ、市長に計画書が手渡された。予定では2025年7月には計画が発効するはずである。立地適正化計画策定委員会の委員の一人としてこの計画に関わった身として、備忘録も兼ねて簡単にこれに触れておきたい。

立地適正化計画りっちてきせいかけいかくとは、将来の人口減に備えてヒトやモノを集約していこうという計画である。コンパクトシティ構想と言い換えたほうがわかりやすいかもしれない。

小樽市は40年後には人口が半減するといわれている。こればっかりは日本全体の動きなのでどうにもならない。”町おこし”で人や会社を誘致していくに越したことはないが、少ないパイを奪い合う都合、ある程度現実的な見方をする必要があるだろう。小樽市の人口のピークは20万人で、今の小樽の街はこの20万人を支えるためにできている。しかし現在は10万人で、いずれ5万人になる。つまりは1/4になってしまうということである。このままでは街はスカスカになってしまう。小樽市は消滅可能性自治体のひとつに数えられている。

小樽市立地適正化計画基本方針骨子より

それを受けて、将来の人口減少は避けられないが、人やモノを密集させ集約していくことによって支出を削減し、サービスの低下を抑えていこうというのがコンパクトシティ構想、すなわちこの立地適正化計画だ。

13の拠点

小樽市立地適正化計画基本方針骨子より

地図を見るとわかるとおり、まず地域ごとの拠点を定めている。小樽駅・南小樽駅・小樽築港駅の3個所を中心的な拠点とし、そのまわりの手宮・長橋・緑・桜・新光を地域拠点としている。

新幹線の新小樽駅を見越して天神が広域連携交流拠点に指定されている。ここははたしてどのくらい変えていけるのだろうか。

離れたところでは銭函・塩谷・蘭島があるが、銭函が赤丸なのに対し、塩谷・蘭島が緑丸である。ここが実は大きな違いなのである。それを次の地図で見てみよう。

居住誘導区域

立地適正化計画の居住推奨エリア/計画案をもとに作図

ざっくりいうと赤とオレンジが居住推奨区域、それ以外がその対象外ということになる。

オレンジは幸・望洋台・桂岡・星野に塗られていることからわかるとおり、大規模なニュータウン事業によってできた住宅地で、ここは戸建ての居住が推奨されている。赤がこれから居住を見込める区域で、小樽の町並みに骨格を担うと言っていいだろう。

他の3色は推奨エリアから外れている。ただし緑の区域は小樽市独自の基準によって、地域の特性を活かした居住が見込めるエリアとして設定されている。とりわけ張碓は別荘地として人気があることも指摘されている。

ざっくり見ると、小樽港を中心としたエリアに赤が集中しており、手宮から朝里までほぼ連続している。そして銭函が飛び地で街区を形成しており、札幌市との関係も深いこの地区も将来性があると見込まれている。

未来のある小樽東部に対し、小樽西部は明暗が分かれた形だ。塩谷・蘭島が緑で塗られているほかは、自然共生区域に含まれている。桃内に至ってはそれすら無い。

これに関して旧忍路郡塩谷村の住民からは厳しい意見もあった。塩谷村は最後に小樽市に合併した村である。小樽からはゴミ捨て場や廃棄処理場を押し付けられただけで、見放すつもりなのかと。当然の意見ではあると思う。

この計画の発案当初は塩谷にスーパーのトライアルができていなかったので、買い物にも不便な地域として見なされていた。トライアルができることによって利便性が大幅に上昇する見込みがあることについて意見したのだが、残念ながらそれが考慮に入れられることはなかった。なお計画は5年毎に見直されるというので、塩谷地域は居住推奨エリアに格上げされる可能性もゼロではないだろう。

ただし追い打ちをかけるように山線の廃止が決まっている。居住推奨エリアの制定には駅からの距離がかなり考慮に含まれていたので、これが廃止になるとさらに厳しくなる可能性も否定できない。

計画によって変わること

しかし居住推奨エリアから外れたからといって、直ちに街がなくなるとか、行政サービスが行き届かなくなるとか、立ち退きを宣告されるなどということは決してない。

制度的に見ると、この計画が発効したあとに変わることは次の点だけしかない。

  • 戸建て3戸以上の開発・建設
  • 合計1000㎡以上の建物の開発
  • 病院など特定施設の建設

これらの際に届け出が必要になるだけである。届け出が必要なだけで、制限されたり禁止されたりするわけではない。よって今住んでいる住民にはなにも影響がないし、新しく家を1軒建てたいと思ってもなんら問題がない。あくまでも集合住宅や団地などの建設が対象であることは留意しておこう。

ただし長い目で見ると、推奨エリア外は徐々に衰退していくことになるだろう。人口が半分になるというのだから致し方ないと割り切るほかないのかもしれない。

多少の傷みを伴う計画だが、この計画によってメリットがある。それは国の補助金を得られるということである。立地適正化計画がある自治体と、ない自治体では補助金の出方がぜんぜん違うらしい。

小樽市、立地適正化計画策定急ぐ 総合体育館と公園整備で補助金交付へ 北海道新聞2025/2/3

上の報道にある通り、総合体育館や公園の整備に関する補助金が出ることになっているが、これは立地適正化計画が成立していないと得られない補助金である。ほかにも道路整備などでも有利になるらしく、そのようなメリットを見てこの計画を受け入れるほうがいいだろう。

20年、40年先を見据えた小樽市の未来を考える必要があるのである。

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