昭和35年の札幌バイパス計画の話

備忘録

小樽と札幌を繋ぐ高速道路・札樽自動車道は、小樽から札幌手稲区までは概ね国道5号と並行して丘の上を走っているが、宮の沢の札幌西ICところで山地を離れ、札幌中心部を避けて大きく北に迂回しながら進んでいく。いわゆる「バイパス道路」である。

北5条手稲通と札幌新道・札樽自動車道の交差ポイント

この区間では高架上の高速道路と高架下の国道が上下に重なっている。この下の道路のことを札幌新道という。ところがこのバイパス道路計画、かつては北回りではなく南回りの予定だったことを知っているだろうか。

昭和35(1960)年の『札樽地方総合計画』の計画図を元に、そのルートを現在の地図に落とし込んでみた。

昭和35年の札樽地方総合計画図による札樽バイパス計画のルート図

当時に計画された南回りの札幌バイパス計画と、実際に敷設された札樽新道&札樽自動車道のルートを並べてみると、ちょうど綺麗に札幌駅中心部を包み込むようになっている。

この札幌バイパス計画立案時には、北回りのルートは計画すら立っていなかった。どういうわけか南回り案は廃案となり、最終的には北回りルートが取られている。ただ完全に切り捨てられたかというとそうでもなく、北1条宮の沢通や藻岩山麓通、そして環状線の一部としてそれに近いルートは確保されたといえるだろう。

だがもしこの南回りの札幌バイパス計画が実現していたなら、小樽・手稲方面から5号線を真っすぐ進んで、一度も交差点を曲がることなくダイレクトに12号線に乗り入れることができたはずだ。

札幌バイパス計画の終端部分を拡大してみると、ちょうどあの大谷地の複雑な交差点のところで合流している。手稲方面から藻岩山麓を通ってここに真っ直ぐ接続していたとしたら、車の流れは今とはまた全然違っていたかもしれない。

北回りルートは当時は計画すら無かったと言ったが、正確には別の形で予定されていた。それが産業開発幹線国道計画である。

このルートはちょうど札幌新道と道央新道(国道337)の中間を取るようなかたちのルートで、小樽からダイレクトに千歳方面へつながる36号線へと接続する予定になっていた。

やはりこちらも最終的には廃案となり、現在も実現していない。とはいえ完全に切り捨てられたわけではなく、一部は北回りルートの札幌新道に。そして手稲区星置においては下手稲通として一部実現している。

そして銭函~東小樽区間は現在の国道5号とはまた別に、海岸線に新たに道路を引く予定だった。これを海岸道路構想という。小樽から石狩湾新港にダイレクトにつなぐ道路で、休日になるといつも渋滞する国道5号の渋滞解消を期待されていた。小樽市民にとっても、これは悲願の道路であった。

海岸道路建設陳情書

しかしその後に札樽自動車道ができ、国道5号線も二車線化され、当時のようなひどい渋滞は発生しなくなった。そのためこの海岸道路構想は事実上のたち消えとなっている。だが都市計画上は未だに残されており、中途半端な和宇尻中央通という謎の道路も作られていたりする。

もし当時の計画がそのまま実現していたなら、小樽からダイレクトに旭川方面・千歳方面・石狩湾新港に接続するバイパス道路ができていたことになる。その後実際に作られた現在の道路と比べてみると、なかなか面白いものである。

謎の都市計画道路。海岸道路構想の名残か

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